皆さんは自分の声をコントロールできますか?
緊張して出なくなった、辛いことがあって声が出なくなった、など、声ってコントロールしにくいものなのです。
高度なトレーニングを積んできたオペラ歌手でさえ、精神的に追い込まれている時や、肉親を失った時に声が出なくなったということをよく聞きます。
そもそも、こんなに発達した生態を持つのは人間だけで、それを使って自ら歌うことも、人間にしかできない。なぜこんなに発達した声帯を持つようになったのか?
みなさんは、やつめという生き物をご存知でしょうか?
寄生型の気持ち悪い生き物です。
なぜ今日は、気持ち悪いやつめという生物を持ち出したかというと、声帯がどのような過程でできたのかということを説明するためです。
※本当にやつめは気持ち悪いので、検索しないことをお勧めします。
さて、やつめは名前の通り、8つの目があるように見えるうなぎのような生き物だ。
実際には目は8つなく、ひとつが目であとは全て丸いエラである。
口は、丸く空いており、閉じることはない。円口類(無顎類)と言われる。
エラはどんどん進化していく。
第一と第二のエラが消滅し、アゴになったと言われ、サメなどがそれに当たるそうだ。
そして、第四から第七のエラが、水から陸に上がり原子肺の形成時に、肺の入口をぎゅっと閉めるために進化した。それが声帯の原型になったのだ。
また、それぞれのエラ筋もそれぞれの進化の過程で、第一のエラ筋は顎筋に、第二のエラ筋は表情筋、第三のエラ筋は咽頭筋、第四から第七のエラ筋は声帯筋となった。
エラはもともとフィルターの役割で、やつめの閉じない口から見ても、受け身の一定のリズムがあり、自分では何のコントロールができなかった。
だが、エラ筋の分化により一定リズムからの離脱をしたのだ。
つまり、コントロールのできない自律神経系が支配しているのだ。
自律神経は、内臓の働きや代謝、体温などの機能をコントロールするために、みなさんの意思とは関係なく24時間働き続けています。
意思とは関係なしに動くもの、これが声帯の本性的なものなのです。
だから、コントロールするのはそもそもかなり難しいため、人間の生理に合うように身体全体や情動を誘導してあげる必要があります。
自分の意思だけでコントロールしようと思っているなら、かなり難しいことをしようとしていることになります。
下層音楽家非同盟 いずみ