これは、2016年に早川書房より翻訳出版されたスティーヴン・ウィットというジャーナリストが書いた本だ。副題が「巨大産業をぶっ潰した男たち」。
話題になった本ですし、読まれた方もいらっしゃるかと思いますが、久しぶりに読み返してみました。
色々一回読んだだけでは取りこぼしていた部分や、忘れていた部分があり、また、非常にテクノロジー音痴の私にはきちんと理解できていない部分もありますが、それ以上に、事実は小説よりも奇なりとはよく言ったもので、物語としても面白いんだな〜。
ブランデンブルクというドイツ人のmp3という音楽圧縮技術、ブラム・コーエンというプログラマーのトレント方式によって、インターネットの詰まりという長年の問題が無くなったそう。
そして、ユニバーサル・ミュージックのダグ・モリスについても丁寧に描かれており、音楽業界のドンが、どのような戦略でもって業界で長年戦ってきたのかも本を読めばわかる。
知らない世界を知れて、本当に面白い。
この本を初めて読んだときに、一番驚いたことは、違法アップロードの団体に所属していたほとんどの人が、金銭的な見返りはほとんどなく、フリー(無料と自由)のために、発売前の楽曲を盗んで誰でもタダで聴けるようにしていたことだった。
そして、実際にCDを盗み罪を認めていた人物以外は、無罪となったことだった。法的に音楽を不法にアップロード(リーク)していた被告人に対しておそらく有罪だということを知りながらも罪が重すぎると見て、アメリカ特有の陪審員制度により無罪となったことだった。
サークル活動のような形での信頼関係で結びつき組織されていた。
しかも、その活動を続けるためには、莫大なサーバー管理費がかかるというではないですか!笑
見返りがなくコストもかかるとなると、リスクしかないように見えるこれらの行為。だが、アンダーグラウンドでの頂点で活動していることや、CD発売前に楽曲を一般市民にいち早く提供するなどの使命感のようなものが、そうさせていたのだろう。
その結果、逮捕された海賊もいる。
これらは褒められたことではないだろうし、信じられないほど音楽業界に損失を与えたが、もうこれはmp3という技術が出来上がった時点で、避けて通れなかったことではないのかと私は本を読んで思った。
だって、音楽ストリーミング時代は1987年以前からドイツ人研究者のブランデンブルクによって進められていたのだ。
なるようになった、と。
音楽圧縮技術の進歩があり、音楽海賊(音楽泥棒)たちの活動とそれに対抗する音楽業界の姿も描かれている。
お金がほとんど絡んでいないのは音楽海賊たちなのだが、罪に問われるのは海賊だ。
流れる時代にそって流れた結果なのに、俯瞰で見ると不思議になる。
お金をかけて作り出されたコンテンツを盗むのはたまったもんじゃないけれど、やっぱり海賊たちの主張した正義のようなものがかっこよく見える。
音楽家としてはあるまじき考えかも知れない。笑
貨幣や、音楽、その他当たり前と思っていた物の存在価値が、こうふにゃふにゃと変わってきている今、いろんな物の見方ができることが大切だと思う。
これには、日々勉強しかない。
古いもの、古い考え方が好きな私だが、新しいものや眉唾物に飛びついてみることがとても大切だ。
これから先、音楽はどんなふうに変わっていくのでしょうか?
これについて、私はたくさん勉強する必要がありますね。
何も知らないでは、済まされない時代ですよ!
あー大変だ!笑
下層音楽家非同盟 いずみ